20年作り続けたこんにゃくを、
今度はみんなで作っていく
国の天然記念物にも指定されている屏風岩の麓。「長野」という集落で代々暮らしてきた人々が、「長野生産加工組合びょうぶ 山桜の郷」を設立し、こんにゃく芋の栽培・加工・販売を始めています。組合員は総勢36名。お父さんたちが栽培し、お母さんたちが加工を担当。週に一度の加工作業は、村出身で20年以上前から「みのり会」の一員としてこんにゃくを作り続けてきた奥西幾代さんを中心に、和気あいあいと行われています。
幾多の失敗・改善を積み上げ
生まれたおいしさ
こんにゃくの材料は、農薬を使わずに栽培されたこんにゃく芋とにがりのみ。昔ながらのシンプルな方法でひとつひとつ手作りし、保存料なども使わないため、1週間以内に食べるのがおすすめ。市販のものよりも粒感があってプリッとした食感が楽しめます。こんにゃくを作り始めた20年前を振り返り、「最初は何もわからず、失敗続きだった」という奥西さん。しかしこの20年、県内外のさまざまな場所を視察して作り方を学び、自ら試作を繰り返して、今の感覚をつかんでいったといいます。
「同じ芋を使っても、同じ水を同じ量使っても、少し固かったり、やわらかかかったり、まったく同じこんにゃくはできません。本当に奥が深いです」。そんなこんにゃく作りは、村の休耕地の活用にも一役買い始めています。「こんにゃく芋は鹿が食べないし、年のいった人でも作ることができます。空いている畑で作ってくれる人も出てきました。売れるようになれば、作ることを楽しみにしてくれる人がもっと増えていくんじゃないかと思います」。奥西さんは持ち前の明るさで、村のみんなに参加を呼びかけています。
❶冷凍保存していたこんにゃく芋を解凍する ❷ミキサーにかけてボウルに移す ❸にがりを加えて練り上げる
❹型に入れて成型する ❺大鍋に移して湯がく ❻冷ましてからパックに詰める ❼できあがり
どんどん売って、食べてもらって、
少しでもみんなに還元していく
「びょうぶ 山桜の郷」のメンバーは本当に仲が良く、阿吽の呼吸で、誰かが何かを指示しなくても、流れるようにそれぞれの仕事がこなされていきます。「楽しくて時間が経つのを忘れる」と奥西さんが話す通り、夜からスタートした作業は23時を過ぎることもあるそう。「集落のみんなで一つになって、若い人も年をとった人も一緒にできて嬉しい」。祝いごとや不幸ごと、嬉しいことも悲しいこともみんなで分かち合ってきた行いは、少子高齢化に伴って簡素化が進んでおり、
だんだんと集まって話す機会も減っているといいます。「だからこそ、みんなで何かがしたかった」と奥西さん。「今後は、販路の拡大と作業の効率化に力を入れていきたい。みんな作り方を覚えられたので、どうすればもっとみんながやりやすくなるか、考えたり話し合ったりしていきたいと思います。そして、どんどん売って、みんなに少しでも還元できたらいいですね」。しっかりと未来を見据える「びょうぶ 山桜の郷」の挑戦は、まだ始まったばかりです。