東洋医学の考え方を
健康管理や維持に役立てたい
「曽爾村森林資源活用プロジェクト」の一つとして、心身が健やかな“美人”を育む「曽爾村美人プログラム」。その講師を務めているのは、鍼灸学博士である伊藤和憲さん。鍼灸師を育て、慢性的な痛みに対する鍼灸治療、脳神経外科領域における鍼灸治療、神経生理学を専門に研究もしています。また、鍼灸院「明治国際医療大学京都桂川鍼灸院mythos361(ミュトス361)」の院長でもあります。「慢性痛に悩む患者さんの症状をどうするか、自分で健康管理をどのように行っていただくかなどに日々取り組んでいます。患者さんのなかには、病気を治すことと健康を維持することは同じものだと捉える方がいらっしゃいますが、実は全くの別の考え方です。治療は大切ですが、健康管理や維持こそ重要です。病気と健康の中間—、つまり病院で診てもらうと正常で病気ではないけれど、症状がある状態を未病といいます。この状態は東洋医学が得意としている領域なので、健康管理や維持に役立てていただきたいのです」。
健康に美しく
寿命をまっとうする「養生」
健康を維持するには
生きがいなどの目的が要る
養生と曽爾村はどう交わっていくのでしょうか。「曽爾村美人プログラム」では、まず村民に運動や体の仕組みを学ぶアクティビティを通じて健康の原理を知ってもらうプログラムを提供しました。また、村の小学校で伊藤さんが授業を行い、小学生に健康意識について教える取り組みも行っています。現在は、そのコンテンツの一部を村外の人にも提供する形で、村民や村外の人を対象に、村の景観を生かした野外でのウォーキングなどを開催しています。村外の人が村に来るときれいになるプログラムを提供することで「健康の村」を目指しているそうです。「健康面で困ることがあったら『あの村に行こう』と思っていただけるようになったらうれしいです。人はたった一人では、健康を維持する気概が生まれにくいんです。健康を維持するには、目的が要るんですよね。人とのつながりのなかで自分が必要とされると、生きがいや趣味など健康でいなければいけない意義が生まれるものです」と伊藤さん。村民は、味噌づくりなどの昔ながらの健康の知恵を都会の人に教えることを生きがいに。村外の人たちは、健康の原理を知り、村の人々との触れ合いのなかでより健康に。伊藤さんや曽爾村はそう考え、生きがいを見つけることのできる村をも目指しています。