地元・横浜での製造業を経て
「奈良に住もう」と決断
神奈川県横浜市出身の渡利さんは、同市で製造業に携わっていました。金型製造の町工場に長く勤め、金属加工技術やCAD/CAM(パソコンで設計や生産を行う)を得意としていたそう。分業制ではなかったことから、3Dモデリングなどを含めた幅広い業務を行っていました。しかし、満期終了により新しい仕事を探す際、ふと「奈良がいいな」と考えたことが、人生が大きく変えることになります。「大都市圏に近い立地で、山があるから『奈良に住もう』と決めたんです。実は“自分でつくりたい”と考えているものがあって、奈良であればそこにお客さんを呼び込めるだろうと思いました」と渡利さんは話します。奈良県内で地域おこし協力隊を希望し、いくつか面接を受けたところ、ご縁が生まれたのが曽爾村でした。
愛するスポーツのプランを
村長に直訴し、実施スタート
林業で「森を活かしたなりわい創出」をする担当として、2017年4月に曽爾村へやって来た渡利さん。村内の林業家のもとで、山で間伐や枝打ちなどを行って山を生かす「山いき」と呼ばれる仕事を始めました。そして、その仕事に慣れてきた2017年秋頃、渡利さんはあるプランについて「僕にやらせてください」と村長に直訴し、それをスタートすることになります。それは、渡利さんが10年ほど続けている趣味であるマウンテンバイクのダウンヒル競技の、コースづくり。山に造られた急斜面のコースを高速で下るスポーツです。「横浜に住んでいたときは、春〜秋は毎月のように長野の練習場まで通っていました。全国にはあまり練習場がないんです。都市部からアクセスしやすいところにコースがあれば、きっとプレイヤーの拠点になります」。村は、地域おこし協力隊に対して「林業をベースに、加えて山の可能性を広げる活動もしてほしい」と希望していたため、渡利さんは「ダウンヒル競技のコースをつくりたい!」と提案したのです。