01 暮らしに溶け込む、
曽爾村の薬草文化

曽爾村には、道端にそっと生えている草花を摘み、胃腸の調子を整えたり、肌荒れを癒やしたりするおじいちゃんやおばあちゃんが今も健在です。特別な薬に頼るのではなく、身近な植物の力を借りて健やかに暮らす。そんな、生活の中に薬草が当たり前にある文化と、村が掲げる「心身健美」というコンセプトが合致し、この暮らしを次世代へつなぐため、私たちの薬草プロジェクトは始まりました。
プロジェクトの象徴となっているのが、村に息づく天然記念物「ヒダリマキガヤ(左巻き榧)」の群生林です。推定樹齢100年を超えるこの木々は、江戸時代にはお米と同等の価値を持つ「年貢」として納められ、今も縁起や浄化作用があるとされ、神社・仏閣のお供えや参拝者へ配られたりするほど、大切に扱われてきました。食用や薬用、さらには建材や囲碁・将棋盤の最高級材として重宝された榧(カヤ)ですが、これほど多くの木が残っているのは、先人たちが「一世紀先を生きる子孫たちの財産に」と願いを込めて植え、守り続けてきたからです。
かつての日本で親しまれた榧の実も、現代の暮らしの中ではその価値が忘れ去られようとしていました。私たちはこうした歴史的価値を、現代における「宝の原石」と捉えて、村の人にとっては日常すぎて気づかなかった足もとの価値を、もう一度磨き上げること。古くから伝わる食用の活用を再提案するだけでなく、榧が持つ清らかな浄化の力を現代の暮らしに届けるため、その香りを凝縮した精油(エッセンシャルオイル)の商品開発も手がけています。
栽培し、加工し、その背景にある物語を添えて届けるという循環を通して、私たちは一歩ずつ、村の誇りを未来へとつないでいます。

02 守り継がれてきた、
森の恵みの再発見

榧だけでなく、キハダや山椒、桑(クワ)、ナツメといった植物も、古くからこの村の暮らしを支えてきた大切な資源です。
例えば、伝統的な和漢胃腸薬の原料となるキハダや、香り高い山椒。これらは今、現代の感性に響く「クラフトコーラ」へと姿を変え、新たな層へと届き始めています。また、全国的にも希少な無農薬の奈良県産ナツメは、ドライナツメに加工し、食薬として人々の健康につながっています。
こうした薬草事業の拠点であり、商品開発の「肝」となっているのが「そにのわの台所 katte」です。ここはもともと、かつての特産品であった桑の実を使い、ジャムやジュースを製造・販売していた場所でした。その歴史ある加工場を、誰もが挑戦できるシェアキッチンとしてリニューアル。かつて桑の実が村の活気を作ったように、今は薬草などの曽爾産の豊かな素材が集まり、新たな価値が生まれる場所へと進化を遂げました。現在、桑の実は夏祭りの「かき氷シロップ」など、地域に愛される形での商品化を模索しています。
地域の素材を活かし、katteで磨き上げ、再び村の内外へと届けていく。古くからある素材に新たな息吹を吹き込み、循環させることで、私たちは曽爾村の豊かさを目に見える形にしています。

03 奈良の誇りを再生する、
農家さんとの協業

自生しているものを見つめ直すだけでなく、かつてこの地に存在した文化を再生させる試みも始まっています。その中心となるのが「大和当帰(ヤマトトウキ)」と「大和橘(ヤマトタチバナ)」です。
飛鳥時代から漢方薬として重宝されてきた大和当帰は、特に奈良で栽培されてきた高品質な生薬。現在は、村の農家さんがその確かな技術で苗から丁寧に育て、収穫したものを加工・販売へと繋げることで、持続可能な栽培の仕組みを築いています。
また、日本固有の柑橘であり、目が覚めるような気高い香りを持つ大和橘は、村内で苗木の里親を公募し、それぞれの庭先や畑で大切に育てられています。数年後に実がなれば、それを買い上げ、新たな特産品へと昇華させていく。がんの発症を予防したり、認知症を改善する可能性があるとされる大和橘の活用方法も模索しながら農家さんと足並みを揃えた挑戦が続いています。
農業を基幹産業とする曽爾村だからこそ、最高の素材を育てるプロである農家さんの存在が何よりも欠かせません。育てる役割と、その価値を磨き世に届ける役割。この対等なパートナーシップが循環することで、クオリティに妥協することなく、奈良が誇るべき本物の文化を次世代へと手渡していくことができるのです。

04 薬草を通して、
自然と生きる知恵を学ぶ

昨今では新たな取り組みとして、春と秋に「和ハーブ教室」を開催しています。村のあちこちに当たり前に存在している植物の価値に、あらためて光を当てるための試みです。実際に野山を歩くフィールドワークを行うと、曽爾村には驚くほど多種多様な薬草が自生していることに気づかされます。薬草を知ることは、その土地の自然を知ること。かつての知恵を紐解き、現代の暮らしにどう取り入れるかを学ぶ時間は、私たちが自然の一部であることを思い出させてくれます。
暮らしの中に溶け込みすぎて、これまではその価値に気づかなかった足もとの草花。しかし、その一つひとつに深い物語と効能が秘められています。
代々この地を守り継いできた村の人と、外からの視点で新たな魅力を見出す人。異なる価値観を持つ人々が手を取り合い、地域に眠る宝を一緒になって高めていく。そんな豊かな関係性が、このプロジェクトを通じて広がり始めています。
春には曽爾高原を彩るわらびやススキ。これらもまた、村の環境を映し出す大切な「自然の恵み」です。こうした植物の力をきっかけに、曽爾村の自然や環境をより深く知り、さらにより良い姿へと整えていくこと。商品や体験を通じてこの地の文化を伝えていくことが、一世紀先の未来へ、健やかな環境と誇りを受け継ぐことにつながると信じています。

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